外科の花形は脳・心臓疾患の二分野です

民間の総合病院で外科配属となったある研修医の一日

現在は外科に配属されている2年目の研修医Mさんは、首都圏にある私大医学部6年生の時「臨床研修医マッチング」試験を受けて、病床数1000以上を誇る民間の大規模病院に採用されました。

「マッチング」とは、医学部の卒業を控え臨床研修を希望する医学生と、研修を受け入れる医療機関の意向を組み合わせるもので、以前は大学病院が人気を集めていまし。しかし、この10年は大都市の民間病院への志向が強くなっており、大学病院を希望する研修医は半分以下となっています。そのため、地域や診療科目による医師の偏在が問題となっています。

医学部を志した時点で、将来は、食道、胃、腸、肝・胆・膵臓などの消化器疾患を外科的に治療する「消化器外科」の分野を極めたいと思っていましたが、現在の研修制度のもとでは、総合的な臨床能力の習得を目的として、2~3ヶ月のローテーションで内科や産婦人科、麻酔科、救急など他の診療科にも配属されるようになっています。

しかし、本来自分が希望している診療科でないため、モチベーションの維持が難しいこと、配属期間が短いため、それぞれの診療科で習得できる内容には自ずと限りがあるなどの課題も実感しています。最初は1日も早く手術のスキルを向上させたいという気持ちが早まっていましたが、外科手術を受ける高齢の患者さんは内科的な疾患を抱えているケースも多いので、最近は外科以外の疾患を勉強するのも大切だと考えて日々の診療にあたっています。

研修医は自宅で勉強することも多いうえ、病院のカンファレンスで行うプレゼンテーションの準備等もあり、夜は遅くなるのですが、朝も早いので大変です。重症の患者さんの採血を自分で行い、指導医(オーベン:研修医などを指導する立場の医師)が来る前に昨夜の病状はどうだったか、今朝のデータはどうなっているのかを頭に入れておかなければなりません。

採血を終えてナースステーションに戻ってくると、看護師から内服薬や点滴、検査オーダーに関する質問を受けたので、自分でわかるものはその場で返答し、あとは指導医に聞くことにしました。

指導医や他の研修医が一同を介して行うカンファレンスでは、徹夜覚悟でまとめた資料を使って術前のプレゼンを行いました。外科のプレゼンを要領よく簡潔に行うコツは、手術の手順をしっかり理解することだと何度も言われているのですが、自分はかなり苦手です。

なんとかカンファを乗り切ると次は入院患者さんの回診を行います。手術後の患者さんのガーゼを交換したり、点滴やドレーン(手術部位に溜まった浸出液を体外に導き出す管)を引き抜いたりします。その後、回診の所見を参考にして、点滴のメニューや行うべき検査の内容を決定し、指導医の指示を仰いだうえでオーダーします。

手術がある日は、ストレッチャーで横になった患者さんを担当の看護師と一緒に手術室まで案内します。外科医にとって実際の手術は最良の勉強の場となりますので、基本的に研修医は全ての手術に参加し、その多くで第二助手(術者、「前立ち」と呼ばれる第一助手に次ぐ、三人目の医師)を担当します。第二助手は何時間も同じ姿勢で手術器具を持ったり、臓器を押さえたりしなくていけないので、若手でも体力的にしんどいケースがしばしばです。

常に緊張感が強いられる手術室ですが、術野(手術操作を行っている場所)が全く見えない体勢の時には、睡魔がやってくることもあります。今までは、手術の最終段階で行う皮膚縫合しか任せてもらえませんでしたが、最近は簡単な外来手術などでは、指導医の立会いのもとで術者を務めることもあり、やりがいと責任感を感じています。

手術が無事に終わると、患者さんの血圧や呼吸などのバイタルサインを確認し、点滴の内容を修正したり、鎮痛薬をオーダーしたりします。術後にバイタルサインが安定しなかったり、ドレーンの性状などに異常が認められた場合には、指導医に連絡して指示を仰ぎます。

現在の病院は、厚生労働省から「治験中核病院」の指定も受けており、製薬企業の依頼を受けて、新薬候補の臨床試験を行い、安全性に関するデータ収集を行っています。そのため、患者さんへのインフォームド・コンセントを行うCRC(治験コーディネーター)など、治験担当の看護師の募集も活発に行っています。こちらは一般企業で働く感覚に近いのか、同じナースでもダイブ雰囲気が異なりますね。

今夜は研修医当直の当番からは外れているのですが、夜間に救急患者が搬送されてきた場合には初期診療を任せられたり、手術に参加させてもらえるので、受け持ち患者のカルテなどを整理しながら病院に残っていました。すると日頃お世話になっている先輩のK先生がやってきて、一緒に夕食の出前をとってくれました。研修医にとって、このような仕事の合間に聞く先輩の体験談は非常に勉強になりますし、診療の疑問点を質問したり、コメディカル(特に看護師)と上手くやっていくコツなどを相談することができます。

もっとも、先輩の世代が研修医だった時代は待遇が酷かった(ほぼ無報酬労働)ですので、その怨念なのか「女医は何かというと"ワークライフバランス"という言葉を免罪符のように使って、プライベートを優先させるし、今の若い世代は恵まれているよな!」という愚痴に付き合わされることもあり、そういう時はありもしない用事で脱出を図るのが定跡です(笑)。